途中下車 (再掲)/mizu K
あ いやん くすぐったいわ
だめよ そんなところ
さわっちゃ
ママがかえってくるわ
ああん いやん
だめってばあん あはん
という本をとなりの座席
の人が読んでいたので
なんとなくとなりから読んでいて
なんとなく耳たぶあたりがぽかぽか
していると
赤くなりましたね
といって車掌がすたすた
通りすぎていった
しかたないので次の駅で
降りてホームをすたすた
歩いていると人はみな
駅舎の柱をよじのぼっている
くもの糸のようですね
そう杖をついた人がいう
半透明の駅舎の屋根
あわいひかりでうすぐもり
たまごのからのよう
みな
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