てるてる坊主の六月/望月 ゆき
 
雨降りが続くと 
そこいらじゅう軒下に 
てるてる坊主がぶらさがっていた
あの頃

昇降口から振り返った校庭は
ところどころ
コーヒー牛乳の水溜りで
少しだけ、おいしそう

なぜだか上履きの裏っかわは
濡れていて
階段には無数のあしあとが

号令がかかって
着席する、ちょっとのすきに
黒板の前の先生が
うねった前髪をこっそり直したりする

雨の日、学校には
図書室からインクの匂いがこぼれて
教室では
シャープペンシルの芯の匂いが
それに混じっていた

雨の日のぼくらは
髪も ランドセルも
なにもかもが、湿気ていて
ちょっとしたことで
泣いたり
鼻をかんだり
したので

ポケットの中、
いつもは出番の少ない
折りたたまれたちり紙が
大活躍した

あまったちり紙は
たいてい
夜、てるてる坊主に姿を変える


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