午水帰/木立 悟
 



雪虫の柱と
煙の柱が宙に交わり
何が居るのかわからぬ卵が
草と木の根に降りそそぐ


ひとつの岩の上に生まれ
岩を呑みこみ育ちゆく樹
卵の音を浴びている
卵の光を浴びている


けものみちには すぐ効く毒を
ほしがるものが多すぎる
あとからゆうるり
効く毒もあるのに


空を円に切り 球に切る
水のやいば 血のやいば
雨尽きるまで尽きることなく
空尽きるまで尽きることなく


かけらが震え
まぶしく沈む
泡のはざまを昇る弦
変わらぬことの悲しみのうた


離れた川の 双つの中州に向かい合い
緑を振りつづけるものの目に
金を振るものの目が応え
響きは水を伝いつづける


何かをとらえようとして
とらえきれずに残る指の輪
ざわめきがざわめきを運び去り
何もないざわめきの残る径


一重の風と一重の緑
傷のようにひらく岩の目
草と木の根に消える卵から
生まれつづける波の子を見る















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