枕木の音 /服部 剛
 
旅先の古い駅舎の木椅子に座り 
彼はなにかを待っている 

別段何があるでもなく 
時折若い学生達の賑わいに 
花壇の菊の幾輪はゆれ 

特別おどろくこともなく 
杖の老婆はゆっくり横切り 
遠い空に浅間山の煙は昇り 

遥かなる 
昨日へのびる 
枕木の彼方から 
あの古めかしい汽車の音が 
こちらにむかってくる 




戻る   Point(5)