枕木の音 /
服部 剛
旅先の古い駅舎の木椅子に座り
彼はなにかを待っている
別段何があるでもなく
時折若い学生達の賑わいに
花壇の菊の幾輪はゆれ
特別おどろくこともなく
杖の老婆はゆっくり横切り
遠い空に浅間山の煙は昇り
遥かなる
昨日へのびる
枕木の彼方から
あの古めかしい汽車の音が
こちらにむかってくる
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