最後の手紙は出口から届くだろう/ホロウ・シカエルボク
住所を知ることは難しくはないだろう
なにもかもがまだ終ってしまったわけじゃないから
取り戻そうと思えばそうすることが出来るくらいの時間だろう
だけどあのひとがもしもわたしがそうすることを願っているとしたら
私は決してそちらを選ぶことを良しとはしないだろう
その日のうちに辿りつけない辺りの空を眺めながら呟くのが好きなひと
それが詩人というものなのだとあのひとはいま考えているだろう
枯れた葉を鉢に戻して時計に目をやる
お気に入りのマーケットがそろそろシャッターを上げる時間
バターロールとマーガリンを買って
挽きたての豆で美味しい珈琲を入れよう
一日はいつからだって、始めることが出来るのだ
それもまた詩人としてのスタンスであることをあのひとに
伝えることが出来なかったそれがつまりわたしの限界だったのだ
新しい住所を知ることは難しくはないだろう
そのことだけをわたしはいまあなたにはっきりと教えてあげたいのだ
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