最後の手紙は出口から届くだろう/ホロウ・シカエルボク
いま、わたしは玄関の隅のしおれたパキラの、枯れた葉を一つ手に持って
騒々しく消えていった大切なひとつの
約束のことをまざまざと思い出していた
「キンモクセイが香る季節などに嘘をつけるものなどいない」
公式を信じない学者のように
その日のうちに辿りつけない辺りの空を眺めながら呟くのが好きなひと
ロマンチシズムを鎧のようにまとって
汚れた都会を歩く事がプライドだと思っていたひと
飢えたカラスが定められたことを気にせずに
街路にごみを撒き散らしている
林檎の芯と使用済みのコンドーム
同じ比重であるかのように決めかねている
食料品店のおばさんが密かに
たぶん今
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