人間、その他大勢/Tsu-Yo
 
   1
野原を駈け抜ける
モノクロテレビの遙かうえ
空が上手に飛んでいく
秋だな
と誰もが呟きたい秋に
ベースボールは歌わない
アウトとセーフの間を
走るのはイタチ
追いかけるものはなんだ?
意味のような尻尾をのばして
嘘のひとつもつけないならば
みずから嘘になればいい

   2
きみ と呼べば
きみ はいない
振り返るのはヒナゲシばかりか
遠くで雨が降る日にも
海は海の影を探しているなあ
どこかの街では
電信柱の背骨から
するり するり と
鰯が剥がれ落ちていく
それは正確に
鰯らしく生臭い
空気の海は泳げない
産まれたら
死ななくてはならない

   3
そしてインコが
居なくなった
鳥籠のなかで
何かの母親を飼う
道理だ
道理が必要なんだ!
って誰かが言ってたよ
ところでさ
地球犬がね
ぼくの足に噛みつきやがって
それでようやっと
人間になれたんだ




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