よく判らないけどうまくない気分と幸か不幸かはたぶん関係がない/ホロウ・シカエルボク
マンが通り魔に刺されて死んだ
その後10分後に僕はそこを歩いていたんだ
二車線の道路を隔てた向かいの歩道を
あのときもしもあちら側を歩いていたとしたら、なんて
あれこれ考えてもしかたがないことだけど
住宅街が終り
小学校の壁に行き着く手前に
結構仲の良かった友達が住んでいた
父親が仕事で失敗したとかで
五年生だか六年生だかのときに突然居なくなった
よく晴れた日曜日の午前
子供がまたがる消防車を残して
殺人のように空っぽになった馴染みの玄関口
その家ももうなくなった
雑音を気にするやつにはとても住めなさそうな
安普請のハイツがひとつ建っているだけ
郵便受けの名札を
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