上司のくしゃみ /服部 剛
 
ほねつぎから帰った祖母が 
我家の壊れたインターフォンに 
「故障中」を貼ってくれと 
ガムテープをさしだした 

腰を痛めて休養中のぼくは 
マジックで「故障中」と 
力強い字で書いて 
門前のインターフォンに 
ぺたりと貼った 

今頃職場の机では 
上司泣かせのぼくを
なぜか世話する 
眠そうな所長が 
くしゃみをひとつ 

(壊れているのはお前じゃないか) 
あきれた声が聞こえそうで 
音の鳴らないインターフォンが 
自分の腰であるかのように立ちつくし 
「故障中」の文字をみつめた 




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