きみ/草野春心
 


 僕の書く詩に出てくる
 君という二人称は
 とくに中身をもたない
 かといって読む者ひとりひとりに
 語りかけるような無防備さも
 僕はけして持ち合わせていない
 いわばそれは揺れているのだ
 思い出と今の間を
 現在とこの先の狭間を
 詩はその歪みを整えようと心を尽くして
 けれどもついに元通りにはできない
 〈君〉は一種の神秘であり
 探すべき答のような気もする
 あるいは空虚な〈僕〉のかわりに
 確かなもの(辞書的な意味?)を求めているのかもしれない
 きみ という発音は
 なんというかとてもしっくりきて
 魔法のような響きだけれど
 音 それ自
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