冬になれば野たれ死ぬだけのキリギリス/AB(なかほど)
 

たいしたことじゃない
季節の変わり目に強がって
いつも風邪をひいてしまう
そんなもの
僕が消えた夜は
あの人はなんて優しかったんだろう
なんて泣き屋は呼ばなくてもいい
きりぎりす
きりぎりすきりぎりす
ふたりの
いや
たぶんひとりのきりぎりす
冷蔵庫の裏で乾いてゆきながらも
鳴き続けた日々のように
僕らの明日はどっかにつながってるんだ
さよなら
なんて言うもんか
って
鳴きつづけて
ぱたりと
絵本が倒れるように




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