輪郭、その曖昧な、/望月 ゆき
 
現在という塊の中から
わたしの輪郭だけを残して、わたしが
蒸発していく
夕暮れの空は赤く発光し、届かない高さで
じっとして居る
いったい、わたしは何に忘れられたのだろう



浮遊するわたしを 秋がついばみ
指先から徐々にほつれはじめる
風が吹いて、やがて 
わたしの輪郭が住む、あの部屋の屋根を越えて
降りつもる金木犀に、重なって眠る
幼い日の、記憶



透明なわたしに、午後はいつもやさしい
西からの引力が 窓に反響して
わたしを震わす
祈りにも似たその声と 時間の歪(ひず)み
それだけがわたしを助け
地面とわたしとをつなぐ、{ルビ蝶番=ちょう
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