四行連詩 独吟 <仮>の巻/塔野夏子
 
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逆さま噴水のそばで待ちあわせて
天空美術館へ行こう
お互い仮名のままでかまわないさ
一緒に過ごすのは 架空の時間だから

     *

時は光り
月は薫り
空は踊り
道は歌う

     *

古い歌を歌いながら
円いテーブルの上の白いカップに
アールグレイを注いでいる
彼女の片隅にコスモスがそよぐ

     *

黒衣の人々が頭を垂れ
黙々と 列をなしてゆく
ブルウグレイの空の下
荒れ地の石たちを踏みしめてゆく

     *

石の中に潜む青空と
そこを行く雲たちと
そこを飛ぶ鳥たちの
気配を聴きとろうとする耳がある

     *

おぼえのあるいくつもの気配たちが
月のない夜 それぞれに仮面をつけて
あらゆる方角から集まってくる
椅子に坐る僕を 何も云わず取り囲む




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