世界はその日に向かって/霜天
壁に残る跡。ひとつ、ふたつ手を叩いて。軽い縁取りで足跡を残しながら進める日は、きっと幸せなはずで。迷うように降り注ぐ朝に、世界はその日に向かって。
壁に残る跡、弾痕。触れたくなりそうな光を残して。爆発する、声が波になって、押し流される部屋には、白い椅子がいくつも並んで。いつかはかたちになりそうな夢に、誰かが触れるのを焦がれている。空からはいつも「明日」が降ってきて、「昨日」を押し流してしまう。それがその街の全てで、あなたたち、が、そこにいる証で。弾痕、いつも触れたくなりそうな光を残して、音が、声が、炸裂する音が。
十年前にも。
十年後にも。
街に流れる歌は変わらずに愛を叫ん
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