心中・焦/輪橋 秀綺
くちびるが恋しい あなたの
くつろいだときの 醜く ゆるんだ 肉
に まんまと隠れたつもりでいる
あの ぬるい 感触 が
こんなにもつめたく つまらなく なってしまいました
それでも なめたい
あなたを 記憶ごと まるごと 全て吸い込みたい
そして 嚥下して あなたを 強く感じ取りたい
感情が 私を小刻みに震わせる/
私は舌を出す
硬直したあなたを咀嚼する様に眺める
冷たい皮膚へゆっくりと着地する と
私の舌は味覚して あなたは酷く臭う
誰も見ていないまま
長く 重い 時間だけがゆれる 部屋
(私の内側で 私たちは やわらかく かたくなに 溶け合う)
もうすぐ私たちはいなくなるでしょう
あまりにも近づきすぎて 反発して
完全なさびしさを映し出すでしょう
対照して
途方もなく うつくしく
……
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