白空/木立 悟
重なるばかりの泡のなかから
一本の白い髪のように
細く硬くかがやきの無いものが
音も無くゆっくりと起き上がる
空から空へ
外骨格のつながりへ
いのり薄いいのりは
雲洗う雲の青になる
闇のなかにある手だて
闇のなかにだけある手だて
やさしくやわらかな声とともに
明るく置き去りにされてゆく
前を後ろを振り向くとき
見えない標を見せながら
失われる度に現われる
手のひらにからだにあふれる光
空は空の肉を得て
分かれつづける生きものの道を
あるがままに歩み 変わりゆく
その声はまぶしく降りそそぐ
置き去りの闇に降りそそぐ
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