焦れる/clef
受容のその一言を得るがため 苦渋の部屋の
戸を開き 語意の裏の裏を読むに勤しむ 部
屋とは即ち余地に他ならぬのか 心を配ると
は誰の安息のためか 心を働かすとは 何の
ための機知なのか 「見えざる手」に身体ご
と預け 神託の御詠歌を唱和する老若男女は
単純な音階の最後のフレーズを 必ずハモら
せた そろそろ思い出そう その舌の根も乾
かぬうちに 戯れはしゃいでいた二次元の窓
を 煤けた抹香臭い皮膚から投げ出された
放縦な言葉を 灰燼で詰まった気道に 無理
やり空気を送り込むなら 耳障りな擦過音に
鼓膜が捩れる ハーネスに繋がれた犬が 軋
んだ吃音を喉の奥から絞り出しながら 今
目の前を横切った
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