空き缶/虹村 凌
ス
ほら見えただろう?」
ジョナサンは唇だけを動かして言ってたんだ
懐かしい映画みたいに写る昔の日々は
どんどん色あせて白黒に近づいていく
あの頃の太陽にはヒビが入っていて
あの頃の月はもう砕け散っていて
今にも飛び散りそうだった自分自身は
何がなんだか思い出せない
でもあの頃は
ジョナサンが飛んで行く方向には
あんな高いビルは建ってなくて
季節は狂いなく変わって
何時も新しい冬がきてた
どうしたらイカした人間になれる?って聞いたら
「世間が平和になったら詩人は飯の食い上げだぜ」
ジョナサンは煙草を咥えたままでこんな事を言ってた
「無責任が止まらないんだろ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(6)