空き缶/虹村 凌
 
シリカゲルの砂浜に打ち寄せる波間に
ひとを仕合せに出来る鐘が見えた気がした
それは瞬く間に沈んでしまったけれど
少しだけ笑顔を取り戻したカモメのジョナサンが
何かを叫んで実家に帰ったんだ
眠くなるような早さで
風が肩の上を通り抜けていく

「人間は地球の癌細胞みたいなものだけど
同時に宇宙のスパンコールみたいだと思うよ」
何時だかジョナサンは言っていた
「明るすぎてよく見えないのなら
世界を黒いカーテンで覆いつくしてみればわかるよ
重たいビニール袋をぶら下げる主婦ポエム
オッサン仕事帰りレクイエム
路上のギター弾きレジェンド
電信柱に隠れて見えない女子高生ブルース
[次のページ]
戻る   Point(6)