世の中/霜天
雨の日に
長靴履いて
出掛けると
街は水没していた
どこへ行っても
ざぶざぶと
音がついてくるので
大好きな傘を叩く雨音が
いつまでも聞こえてこない
大通り
だった場所までくると
困り顔の人たちが
何かしようと何もできずに
雨に叩かれ放題になっていた
口調は興奮していて
笑い声もよく響く
よく遊んだ丘までくると
そこだけは水の上から顔を出していて
ぼつぼつぼつと
傘から雨音が響きだしたので
ようやく笑顔になれた
水没した街を見ると
水没した僕の家が見えたけど
後片付けがたいへんだな
なんて
そのときは思いつきもしなかった
ただ
雨音のリズムで
歌を歌ったりした
結局は
なるようにしかならない円の内側にいて
あっちもこっちも足を引っ張り合いながら
困り顔で楽しんでいる
世の中はそんなふうにできている
らしい
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