ソ ラ ヒ ナ タ/和泉蘆花
 
しの背中に乗って、

空のお国へゆきましょう そこは争いも妬みもない自由な国。

神さまは お酒を飲みつつ ダンスをなさっています。

使いのわたくしは モンシロ蝶々と申します。

神さまにお酒の飲みすぎでございます。 といいますと、

これは単なるお酒ではないとおっしゃいました。

では その赤い飲み物はなんですかと 尋ねますと、

苦しみだと申します。

モンシロは 苦しみを飲まないでくださいと懇願致しました。

しかし 神さまはおっしゃいます 「これは悩みだ」

わたくしはどういう種類の飲み物なのですと聞きました。

人間さまが流した血だと申します。

使いのわたくしは 人間界から寂しい人間を天上界に連れてくる使命を受けました。

神さまは同じような気持ちの人間と 一度お酒を酌み交わしたいものだとおっしゃっています。

どうぞ わたくしの背中にお乗り下さい。

神さまはお髭を生やしていらっしゃいます。お帰りのさいはそのお髭を一本さし上げます。

では いまから ゆきましょう。 なにもない天上界へ。
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