骸(むくろ)/かのこ
 

狭い食卓いっぱいに広げられた
トースト、スクランブルエッグ、母の匂いのする林檎も
気付けばもうとっくの昔に消滅していた
いつかの朝陽は今、閉じられようとする夜の瞼にすり替わり

夕闇の立ち込めるベランダで鈴の音が鳴る
年老いた飼猫の首輪を外してあげようと思った

例えば、今もひとつだけ残ったあの星の名前を
誰も覚えてはいないのと同じように
季節を重ね、感傷が重たくなっても
自らを変わったとは言わない

冷えた秋風にさらされ横たわる
その骸の影は黒く見えた
首より中身を覗いてみれば
そこには満天の星空が
ぽっかりと口を開けるようにして
今まさに、私を飲み込もうとしている
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