茜/ゆるこ
 
 
 
ノスタルジックな夕陽に
息を吹きかける
 
(あかね、
 
呟いては繊細に笑い
凝りすぎた肩をぐるりと回す
 
過去の残像より
今の空のほうが余程親切で
おーいおーいと呼ぶ声が
遠くから聞こえた気がした
 
 
(あかね、
 
 
夢にまでみた世界を
こんなに温かく潤して
表情の焼けたこどもたちが
笑いながら手を振った
 
 
10円玉の飴や
間のびした豆腐屋さん
 
からからと錆びた自転車に
静かに寄り添うありんこたち
 
 
熱い息を空に戻すと
茜は優しく隠してくれる
 
 
ちりりん、と
ベルの音
わたしはひとり
影を見つめた
 
 
(ねえ、あかね
 
(きみのこころを
(せかいのちゅうしんにしようか
 
 
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