笑顔の意味/松本 卓也
 
向けられた笑顔の全てが
嘲りだと信じていた時期がある

空が曇れば必ず雨が降り
見惚れた花は明日には枯れる
呟いた言葉が嘘に塗れ
聞き続けたい声はやがて遠く

確かなものは何も無い
膝を抱えて腰掛けるベッドの上
意味も無く怯えていた日々

そんなに遠く過ぎたわけじゃないのに
それほど年を食ったわけじゃないのに

失ったものが多かったのか
手に入れたものが少なかったのか
備えた経験は明日を生きるだけのため
青臭い理念を叶えようと拾い集めたもの
無駄な知識として時折感心されるだけ

こんな日々ばかり続くと
別れた人々の笑顔が恋しくなってくる

連なったマ
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