どうぶつ/木屋 亞万
 
原形を留めたままで喰う
残酷さが消えないうちに
生きていたものを殺して
口に放り込んだ事実を
背後に捨ててしまわないために

出会わなければ生きていられた
腹の中の栄養素たちは
かつて多くの食物を得ていた
一日一度では足りぬのは当然で
見えない鎖の根元はとてつもなく広い

生命の死による臭みを消すために
覚えた調理という方法は
生活に必要な新鮮な死体達を
あっさりと物に変えていった
次第に自身の生命の臭みも薄れていく

臭気なき身体を美しいと呼ぶべきか
体毛薄き身体を美しいと呼ぶべきか
猿を醜くした薄毛の自身は
包み隠す衣によって
さらに生死を遠ざけていった

自然に帰れと言うけれど
まだ自身はそこにある
背を向け耳を塞ぎ忘れようとしているだけで
目を剥けば痛みと共に臭気も生死も
すぐ近くに感じられるようになる
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