ドガガガガ/楢山孝介
 

書物の少なさに思いを馳せる
(きっと誤読)

ドガは紙とペンを捨てて
キャンバスに絵筆でもって
言葉を綴ろうと試みた

 このやり方なら詩ぃ書けるかもしれん
 絵描くように詩ぃ書いたったらええんや

でもいつの間にか
ドガは詩のことを忘れて
キャンバスに新しい絵を描き始めてしまった

アトリエに遊びに来たマラルメが言う
 そうだよ。
 君にとっての詩はそれだよ。
 君の絵は詩なんだよ。

ドガは首を振る
 これは絵や
 言葉やあれへん
 詩ぃやあれへん
 何言うとんねんあほ

どちらが間違っていてどちらが正しいかなんていう
どうでもいい話にはならず
二人はその後朝まで酒を酌み交わした
という話は
残念ながら伝わっていない


参考:丸谷才一 山崎正和『日本語の21世紀のために』(文春新書 2002年)
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