童話の山羊の夜のみち/
紫乃
冬の夜の
何もない一本道を
包帯だらけの山羊が
針金でできた自転車に乗って走る
かたりかたりと
暗闇に音を染み込ませていた
煙草の煙と
白くなった吐息とを
交互にはきだしながら
ちりんちりんと
誰に聴かせるわけでもないベルを鳴らして
このまま吐息を全て
夜の大気ととりかえてしまえば
気負わずにすむのだろうか
そんなことが、そっと
山羊の頭をよぎる
両腕にあまる夜の気配は
針金がひしゃげるたびに
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