近松門左衛門の町/音阿弥花三郎
 
白昼 女である私は女である
にもかかわらず 童貞の硬い××××トなって近松の町に停つ 
すべての人に向かって存在理由を述べる すなわち 
私は恋人を待っている!のである ト 
待たされる時間は私を透明な体液で溢れさせてしまう
そんな私に町の人々はまだ気づかない
見れば町行く人々はみな動物の屍骸を抱えている
いや作り物の動物だ
だれもかれもがだ そのせいか私に気づかないのだ 
はなはだ不本意だ 注目される私を私は私の恋人に見せたいとても 
見せたい 
辛吟の時間はあまりに永くその時間が私を巨大にしてしまう
恋人は約束通りの遅刻をする 
恋人は丁寧に遅刻を詫びてなよやかにも暖
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