青年日和/
山中 烏流
幼なじみのあの子が
繭を紡ぎだしているのを
カーテンの隙間から
覗いていたからでは
ない、ことにして
名字と名前の間
その空白が、自分なのだと
言い聞かせるように
僕の利き手は
濁点を書きなぐる
そのうち
髪の毛の先から
アメーバ状になることを
密かに期待しながら
濁点を、書きなぐっている
その
次の次の瞬間辺りで
僕はまた
僕に羽化をすることを
テストの端に付けた
小さな丸の中から
誰かが覗いている
の、かも
しれない。
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