青年日和/山中 烏流
 
テストの端に付けた
小さな丸の中だけが
やけにリアルに見えて
目を逸らした、あの日
 
飛び交うチョークの粉と
女子高生の猥談の側で
僕は、サナギになる準備を
早々に始めていた
 
 
ラムネ瓶を割って
取り出したびいどろだけが、
自分の持ちうる中で
唯一の本物なのだと
 
そうしてあの日
ラムネを買っていた店は
五年くらい前に
潰れてしまった、らしい
びいどろはまだ
手の内にある、というのに
 
 
まだ拙い筆跡と
試行錯誤の消しカスと
耳元から溢れた旋律が
折り重なった、あと
それが繭になることを
僕は知っている
 
昨日、
幼な
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