夜は恋し/蘆琴
 
強く蹴ると高く昇つて弾じけた
砂利道をざくざくと、ざくざくと
街灯の暗きままに月は明かりて、
仰げば君も見やるらむ空はきらぎらし
月のやうに日の沈むまま、夜もすがらあふとも飽かぬ、光をくれ
歩み出してけり
されど月の君、などかこの心につき従いて来、
ひと時もえ忘られず、静けさの夜なればいとど恋し
虫の音香る秋の水は、柔らけく流れつつ、
荻の背に隠れつるなみだにかへせ、露置くゝさよ
戻る   Point(1)