きみ/瞬き/ぼく/山中 烏流
 
 
 
 
ハンカチが飛んで、
きみのスカアトがめくれて、
ぼくの目線をとらえて、
きみはウインクをして、
踏切の音がして、
知らない歌が聞こえて、
人々の足音が止まって、
ギタアの低音がまざって、
ネコの鳴き声がして、
きみはまだほほえんでいて、
ぼくはただ見つめていて、
その一瞬のあとで、
電車が通り過ぎて、
ごうっと風が吹いて、
風圧に目がくらんで、
少しだけ瞬きをして、
青空が再び覗いて、
踏切の音が止んで。
 
 
気が付いて、
目を開き直して、
きみのスカアトを探して、
見当たらなくて、
ハンカチをもう一度飛ばして、
見当たらなくて、
踏切がまた鳴り始めて、
耳を澄まして、
ネコの鳴き声がして、
ドラムがリズムを刻んでいて、
それが鼓動に聞こえて、
やっぱりきみを探して。
 
 
瞬きをした先で、
きみはいつも居なくなって、
ふと思い出した一瞬で、
ぼくの視界の中だけで、
きみは静かに息を続けている。
 
 
 

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