電車ごっこ/yo-yo
ちいさな電車だった
いくつも風景をやり過ごした
乗客はいつも決まっている
新聞のにおいのする父と
たまねぎのにおいがする母
シャンプーくさい妹と
無臭のぼく
電車ごっこの紐は
祖母の着物のほそい腰紐だった
停車する駅も決まっている
五丁目と市民病院前
ある夜
祖母をとおい駅まで運んだ
妹はお風呂のような匂いのなかで眠り
父と母は長い話をしていた
ぼくはずっと耳を澄ましていたが
だんだん話が解らなくなって
とつぜん体が浮いた
あれから
ぼく達のちいさな電車は
走っていない
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