夢を買う男/風音
その男は
音もなく戸口に立っていた。
帽子を深く被って
顔はよく見えない。
ーあんたの夢を買うよ。
ー・・・
ーあんたの夢を買うよ。
やっと答えた。
ーどんな夢なの?
彼は中に入って帽子を取った。
思ったように
優しい眼をしていた。
ー誰にだってあるだろ?
壊れた夢、
叶わなかった夢、
砕け散った夢。
そんなものを買うのさ。
そうね。
たくさんたくさんある。
そんな夢が。
なんだかいつかこの男が来るような気がしていた。
男はわたしのこころを見抜いたように
帽子を天井に放り投げた。
そして
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