ただ抱かれて眠りたい/松本 卓也
詩を詠おうと鏡の前に立ち
増えた白髪の数を数えた
擦り抜けた散り散りの感傷が
部屋の片隅で溜息を零し
歯に噛んだ笑顔を向けてる
捧げたい言葉があるんだけど
きっと哂い無しでは生まれない
無意識に人生の残りを数え
何度呟いたか忘れた言葉を
針葉樹の葉に書き加える
終わっているように思いつつ
始まった気さえしていない
かの人が描く自画像は
何処までも似ていないのに
まるで全てが僕であるかのよう
絵の具の先から搾り出す
白と黒で彩られる日々
忘れていたいはずなのに
何度でも夢に見てしまう
今僕の語る人間賛歌を
君の声で聞かせてくれないか
ただ静かに眠りたい
いつまでも夢を見ていたい
夜が終わるまでの隙間
安らぎを思い出せるまで
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