骨と首の話 その4(完)/hon
だ、痛みってやつは、これまでいつも、そんな具合であった。わずかな希望を与えておいて、それにすがろうとすると、希望は取り除かれる。巧妙に、かつ無残に。全くのところ、絶望と幻滅により深い味わいを与えるためだけに、何もかも仕組まれていると思えてならない。私たちはわずかな望みにすがろうとしている人を容易に笑うことが出来ないだろう。
しかし、痛みは再びやってこなかった。私はやがて職場に着いたが、そこでも痛みが復活する気配はなかった。不思議なほどきれいに、痛みは消えていた。
これを、前日の出来事に関係あると考えるか、それとも関係ないと考えるかについては、自分の中でも結論が出なかった。
「今日はなんだか、その……スムーズですね」
出会った職場の同僚に、いきなりそう言われた。
「スムーズですね、って」私はつい笑わずにいられなかった。「朝イチから、どんな挨拶なんだ」
「だって、なんだか最近体の動きがギクシャクしてたんですもん」
彼女は、私が笑ったのに安心したのか、あけすけにそんなことを言って笑った。
以上が、私が道で骨を拾った話の顛末である。(了)
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