骨と首の話 その4(完)/hon
 
波が押し出され、私がそれに乗り込むと、ドアが閉まった。電車が走り出し、K駅もベンチに座った学生も遠ざかっていった。
 私はもうこの駅で降りることはないだろうな、とその時思った。
 電車の中は、会社や学校帰りの客で混雑していた。体のあちこちが痛んでいたが、悪い気分ではなかった。周囲の乗客の、汗の臭いや倦怠的な空気も好ましいものにすら思えた。なんだろう、この楽しい気分は。帰宅ラッシュの電車に乗ることなど久しぶりで、私はここでは部外者だった。周りの疲れた乗客はこの路線の常連にちがいなかった。私もこの帰宅ラッシュの常連客であったなら、この電車に乗るのを楽しいなどとは微塵も感じなかったろうけれど。乗車の
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