水面/たもつ
 
魚が三人泳いでるよ
小川を覗き込みながら
子供は母親に言った
暑い夏の盛り
草の乾燥していく匂いもしていた
本当はもっと沢山の魚が群れて泳いでいたのだが
三人目を数えたところで
子供は視力を失ったのだった
それから後の話を
母親は子供にすることはなかった
そして子供は自分と母親が
何人目かを泳いでいると
気づくことはなかった
ただ水面から射し込む痛みのようなもので
胸びれの傷がその時についたものだと
知るばかりだった

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