たまり水/麻生ゆり
それは学校の帰り道
ふいに表れた入道雲のせいで
大きな大きなたまり水ができていた
ふとノゾいてみると
さかしまの街が映っていた
でもよく見ると
私もさかしまに映っていた
反対のわたしは
ただの一人の女で
何もできない
ところがそこに
一台の自転車がたまり水を割って
街も私も分断された
波紋は陽炎のごとく
ゆらゆらとさざめいていた
その中をノゾきこむと
刹那!
さかしまの私が私をにらんだ
まるでコセイダイから私を憎んでいるように
私をにらんだ
でも波紋の中の世界は
青空を映してキレイだった
やがて波がおさまるころ
秩序を回復したたまり水は
また街を映しだす
でもみんな気をつけなければいけない
さかしまの街は
歪んでいて
さかしまの人間は
表の人間を憎んでいることに
戻る 編 削 Point(4)