午後と火/木立 悟
宙を覆う草木のすべてが
さかさまのかたちを描いている
雨は流れ
音は流れず
影は分かれ
影は流れる
短い煙の端々が
長い煙を折ってゆく
煙を生む火はなくならず
煙は渦を増してゆく
其処に 空に 在りつづける
臥した鏡は燃えあがり
後付けの枠は溶けてゆく
底まで至らぬ
みどり みどり
道のかたちに道に沿う
音のない海の手に触れる
風のなかのかたまりが
曇を唱い 曇を生む
四ッ足を知らずに道はのびる
かたわらにひとつの足跡が燃える
煙をさえぎるものの声が
渦の重なりに見えかくれする
日毎に異なるかたちと熱さ
煙
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