銀杯/白寿
ている。
それをしてしまうのはきっと、飢えた醜い自分を隠し、
他人の目を欺きたいからです。
そして、人並に善行をしている気になって、
一時でも渇きを凌ぎたいからです。
結局は、こうして罪に罪を重ねてでしか生きられない。
これが“何か”を捨てた者の弱さと醜さです。
偽物の“何か”なら、手品みたいに用意できます。
自分が常飲しているものをほんの少し
分けるだけのことだからだと思う。
けれど、それを受け取ってほしいとは思っていません。
行為と矛盾しているけれど、そう思います。
微笑んで、そっと床に吐き捨ててもらいたい。
それから、私に本物を求める方がたまにいますが、
期待されても私の中に本物など、
胸襟を抉りとって探しても、きっと見つかりません。
それを強いられると正直なところ痛くて堪らないのです。
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