季節の散歩術/岡部淳太郎
 
 散歩が好きだ。ゆっくりと、目的地を決めずに歩く。春や秋の、それぞれの季節の風物を感じながら、ひとり歩を進める。そんな感覚が好きだ。そして、歌をうたう。そうすると、人からおかしな奴だと思われる。人は陽気にうたいながら歩いている私を遠巻きに見て、ひそひそと囁き合い笑い合っては、私から遠ざかっていく。そんな彼等の態度に臆することなく、私はますます自分だけの散歩にうちこむ。全身全霊をかけてのんびりと歩く。それが散歩の極意である。散歩は他人を必要としない。まったくのひとりきりの世界に沈潜して、散歩によってもたらされる内向きの世界にこもっては、目に映る道や空や鳥や虫や花などに静かに微笑む。目的のない彷徨。そ
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