こんな夜は/風音
 
夜更け
車窓に映るわたしの影
扉にもたれて
窓外を見ても
映っているのは
疲れた車内

電車を降りれば
きっと夜風が吹いていて
わたしをやさしく家まで連れ帰ってくれるだろう

けれど
ドアを開けても
ただいまも言わず

いつからだろう
ただいまを言わなくなったのは

ここはわたしの居場所じゃない
わたしの居場所は
いったいどこ?

遠く離れた両親のもとでもなく
たぶんあのひとの腕の中でさえない

わたしはわたしを見つけられず

こんな夜は
涙も流さず
部屋の隅にうずくまる

こんな夜は
眠らず静かに
夜明けを待とう
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