声/doon
 

 ああ
 と
 言う声と共に私は口を噤んだ

 泣いて欲しいから
 彼らは逝ってしまうのではない
 笑って欲しいから
 彼らは逝くのではない

 何かを残したから
 逝けるのだ
 そう思うと私は
 ありがとうの言葉以上に何も
 なにも
 掛ける言葉が見つからなかった

 ああ
 さようならの言葉とどこか共通点の多い
 呻きに似た
 別れの言葉をささげた


 涼しい風が吹き抜けていた
 青い空の下
 どこまでも階段が伸びていくような気がした
 蒼空に向かい
 私はもう一度

 「ああっ」
 あの太陽もが道しるべに見えて
 感嘆の声を
 私は呟いていた
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