ドッペる/木屋 亞万
 
世界には自分とおんなじ顔の人が三人いるらしい
こいつらはおんなじ顔だから見つけやすいのだが
世界に放たれた俺の分身達は顔が違うぶん見つけにくい
遺伝子がおんなじのクローンであるはずの分身達は
顔性格趣向体型が全く違うのだ
遺伝子は写し取ったように同じなのだが


そして今日俺のコピーと出会ってしまった
何もかもが同じで違うところを見つけられなかった
あいつがいれば俺なんていなくても構わないではないか
じゃあ後たのむわと言って死んじまっても
誰も消えた命に気付きもしないだろう


あんた落第らしいぜと笑うコピーは
違いなんてないであろう俺を見下している
影が焼け跡のように黒く纏わりついている
変わりはいくらでもいるんだよ
すれ違いざまに耳元に残された声
つられるように振り返る
俺のコピーは重そうに背中を引きずっていた


あなたにはたっぷり自分探しが出来るようにしてあるからね
満面の笑みでそう語っていた母の
自分探しは間違いなく間違えている
世界に俺はあと何人いるんだ




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