ジギタリス/ピクルス
「ジギタリス・ブラン」
オラ、妙な病気になってしもうて、体があんまり動かん。
こう、だんだんにな、体が石みたいに固くなってゆくんじゃて。
もう、治らんそうじゃわ。
やれやれ、どっこいしょ。
『あら、起きたの?』
『むう。起きた。橋田の爺さん、死んだそうじゃの』
『…ええ。なんでも急に倒れて、そのまま…らしくて』
『あそこの孫は、なんてったっけ、うちの衿子と同級だったのぉ?』
『そうそう』
陽の当たらない病室で、
老夫婦は水を飲みながら会話を続けていた。
『痛くない?』
『うへへ、男、だからの』
『痩せ我慢は日本一ねぇ』
『ふん。それよか、
[次のページ]
戻る 編 削 Point(10)