湯飲の影 /服部 剛
 
らんぷ一つのテーブルに 
湯飲みはひとり 
ねじれた影をのばして立っている  

窓の外から聞こえる 
鐘の音や鈴虫の唄
歪んだ唇を開いた縁(ふち)からすいこみ 
器の形のままに入った 
お茶は水面(みなも)を揺らす 

傾いたまま 
ゆるがぬ姿で立つ 
ねじれた湯飲み 

丸みを帯びた器の腹に 
(ひとり在ること)の喜びを 
誰にも見せず
ふくらませている  

静止したまま 
踊る 
ねじれた影 




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