群像/草野春心
 
い出が彼の世界を美しく染める頃
  遠くのベンチで恋人たちがキスをする



  そんなに悪い時代じゃない
  ヒトが破壊したものは数知れず
  けれど築いたもののきらめきの中で
  無数の蝶々がささやきあう
  そんなに悪い時代じゃない

   *

  街――それぞれがそれぞれを歩く場所
  道と道の結び目が映し出す
  とらえきれない心の残像
  時は弱く だが確かに進み
  世界じゅうに 消えない皺を刻み続ける


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