サイレン/黒田康之
 
 雨上がりの部室は変な臭いがする。男だらけということもあるが、もう何十年も染み込んだ男の臭いが雨に押されて染み出してきているみたいだ。ただブロックを組み上げただけの窓の小さな部室のブロックは、梅雨と秋雨の時期には乾くことがない。狭い空間にバットやらグローブやら、アンダーやら練習着やらが散乱している。決して青春なんてきれいなもんではなくて、ただ臭いだけなのかもしれない。僕は青白い色の鉄のドアを音を立てて開けた。というより無音で開けることなど不可能なので、ギイギイと開けてギイギイバタンと閉めるのは普通のことだ。するといつものように藤野がいた。藤野は野球の清原に似た風貌の男だった。百八十五センチくらいの
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