マシュの葬式/フユナ
辻を抜けて、
共同墓地に葬列は行く
本屋には寄らなかった
マシュには家族がなかったし
黄色い本はどこかへいって
本屋はもうなかったのだから
泣き女のひとたちが待っている
共同墓地のうつくしい入り口に
葬列は つく
おとなのひとは
たくさん泣いていた
マシュのことをよく思い出せなかった
泣くほどに思い出せなくなっていった
マシュの店にあったのは
マシュはとなり町の病院で死んだ
マシュが愛した
マシュの本屋では死ななかった
ということなんだ たぶん
と
それを盗み見て
こどもらは おもう
似たようなノートに
似たような言葉で書き込んで
ただ
鍵だけは、さまざまだった。
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